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(株)ニュースダイジェスト社発刊『月刊 生産財マーケティング』
2011年 6月号に当社取材の様子が4ページわたって掲載されました。
(株)ニュースダイジェスト社発刊
『月刊 生産財マーケティング』2011年 6月号より
社員皆んなが主役
「全員野球」でスキル、効率アップ
精密機械の部品加工と組立を得意とする大成工作所(大阪府交野市)は、岩倉由浩社長以下、社員全員が技術力と経営センスを兼ね備えた“マネージメント・エンジニア”を目指してきた。会社規模は小粒でも、「全員野球」をモットーに、きらりと光る知恵と技を持ち味にしている。
[会社概要]
大阪府交野市幾野6-26-4
TEL.072-891-4800
岩倉 由浩 社長
社員 14人
「当社は、経営感覚を備えた技術者によるマネージメント・エンジニア集団。チームワークによる実践力を武器にしています」──。自社の特徴をそう分析する岩倉社長の横顔には、理工学部出身の経営トップによく見受けられる技術志向オンリーではなく、バランス感覚のある経営者の一面が見え隠れする。
高精度高品質の複雑構造部品は、多くの工程を経て製作される。例えば、丸物の高精度部品(10μm以下)は、旋盤加工⇒フライス加工⇒円筒研磨・平面研磨加工⇒マシニング加工⇒冶具製作⇒マシニング仕上げ加工⇒熱処理⇒品質検査⇒完成品という流れを辿る。このため、前後の工程に関する情報の共有と報・連・相による連係プレーが不可欠だ。チームワークを重視した「全員野球」が生まれた背景にはこうした事情があった。
同社のようなビジネスモデルにおいては、社員ひとり一人に技量や実力があっても、各人が思い思いの動きをしていては、総合的にみて、最小限の足し算か、悪くすれば引き算になりかねない。それぞれが連携し合うことで掛け算にすることができる。10にもなるし、100にすることだって不可能ではない。
社長の実弟である岩倉律雄取締役工場長は、「社員には、いま携わっている作業だけではなく、前後の工程に対する目配せを怠らず、考えて行動する“考動力”と、数2ステップ先を読んで仕事をする“先読み力”を磨くことを推奨しています」という。同時に、仕事を進めるにあたっては、アナログではなく、明確にデジタル表現するように指導している。
円滑なチームプレーができるように、毎週月曜朝の30分で近況報告などのミーティングを実施するなど、社員同士のコミュニケーションの密度を高める工夫をしている。こうした習慣を徹底し定着させることでケアレスミスが少なくなり、作業全体の効率も大きく向上した。作業者の多能工化、広角視点の涵養など、経営センスを磨くことは、生産性向上のみならず、個々の作業者のスキルアップにもつながっているようだ。岩倉社長のチームプレー重視の考え方は、社内だけでなく、社外ネットワーク活用による相互補完などにも表れている。
大阪の機械産業と言えば、家庭電気製品や金型製品が代表格だが、その昔はミシンや紡績業が盛んだった。同社の出発点も、ミシンの精密部品加工だった。1950(昭和50)年5月、父親の先代社長が大阪市東成区でミシン部品の針棒メタル製造販売を目的に個人創業。70年に株式会社組織へ改編するとともに、現在地に本社工場を新設した。
パナソニックグループとの取引が多く、各種産業機器の省力化設備の設計・製作、電子デバイスの精密部品加工に携わってきた。グループ企業から品質管理などの顕彰実績も多い。また、03年にはISO14000(環境マネジメントシステム)を認証取得した。
一時は、同グループ会社との取引が売上高の8割近くを占めていた。経営の安定化を図るため、小型化、高精度化が進展する電子部品業界で取得した精密加工技術を活かして、取引先を広げていった。現在では電子デバイス・半導体等の製造装置、測定機器の精密部品加工、自動車用電装部品の加工など幅広い分野の精密加工に取り組んでいる。また、昨年末には超精密加工機を導入するなど、微細精密加工ニーズの取り込みにも余念がない。
得意とするのは、ワークの一辺の長さが1m以下の精密加工だ。試作品や比較的少ロットの少量加工から組み立てまで一貫して請け負う体制を整えている。
かつては匠職人による卓抜した個人技能に依存していた時期があった。例えば、芸術作品のような単品製作なら職人芸が良く似合うだろう。しかし同社のように、精密機械の構成部品の高精度加工から、微妙な摺り合わせを含む組立作業、さらにその製造装置そのものを製作するといった業務内容では、個々の作業者に工程全体を見通して最適化が図れる直観力や調整力などの総合的なマインドが求められる。だからこそ、狭い範囲で高いスキルを発揮する職人ではなく、バランス感覚と広角度の視点を持つマネージメント・エンジニアを育成してきたのである。
もう1つの同社の特徴として、クライアント企業との対話を重視し、時代の変化に敏感に対応していく技術提案機能を備えていることが挙げられる。製品や部品は、設計段階から打ち合わせを繰り返し、QCDSの観点から短納期、コスト、精度保持を目的に、積極的に改善提案していくことを心がけている。例えば初期の設計では一体物だった部品を、二体物(パレット本体部S55C/熱処理なし、上部位置決めパレット部SKD-11/熱処理)にすることにより、これまで高コストになっていた部品の大幅な短納期と低コストを実現した。消耗品も上部位置決めパレット部のみの交換で済むようになり、精度面でも5μmと高精度を実現し、品質も安定できるようになった。
昨今、市場により近い供給基地化を目指して日本の製造業の海外進出が続いている。ここでは精密加工ニーズも少なくない。同社の次の戦略も、このあたりに照準を絞りつつあるようだ。(長井敏明)
電気・電子機器は自動車と並ぶ基幹産業として日本経済の発展を支えてきた。そこでは部品や製品性能が倍数単位で向上する一方で、形状や容積のダウンサイジング(縮小均衡)が進み、部品メーカーは絶えない技術革新が求められてきた。同社もそうした荒波の中で、精密加工技術と品質管理技術を磨いてきた。加工サンプルを見ると、携帯電話やスマートホンの部品、トルクコンバータなどの自動車部品、半導体製造装置や電子部品製造装置の要素部品など多種多様のワークが並んでおり、日本経済を支える中小企業の底力を感じさせる一コマだ。
写真1
加工ワークの一例
写真2
岩倉律雄取締役工場長(左)と岩倉由浩社長。兄弟二人三脚で社業を盛りたてている
写真3
少ロット生産主体だけに、汎用旋盤は使い勝手が良い
写真4
社員数より多い機械設備。多台持ちも容易だ